我が子が幼稚園を卒業しました!
早いもので我が子ももう6歳。
生まれたのなんてつい最近だったのになぁ。
なんと今年の3月で幼稚園を卒業しました!おめでたい!
しかも今年の卒業生で唯一の3年間無欠席!
って言っても卒業生5人しかいないけど。
しかもどうやら出席を取ってるのは週に1日だけらしいけど。
いや、それでもすごい!
ってことで、金メダルをもらいました(上の写真)。
子供が描いた原画を元に作られたメダル。
で、通ってた幼稚園、とにかく行事の内容とか全部内緒!っていう園だったので、
この3年間のことはブログにほとんど書いてなかったんだけど、
ついに卒業したってことで、雰囲気だけ記録に残しておこうかと思います。
お楽しみ行事は在校生のお母さんに内緒なので、ネタバレしない範囲で。
謎に包まれた幼稚園「幼児生活団」
我が子が通ってたのは、いりなかにある「名古屋友の会 幼児生活団」という、
今から80年前くらいからある自主保育グループ。
東京の自由学園(創立100年!)を創設した、羽仁もと子さん創立の幼児教育の場。
自由学園はフランクロイドライト設計の自由学園明日館
(相棒18のオープニング映像で毎回出てくるところ)でおなじみのとこ。
なんなら今はクッキー缶のが有名ですかね。
最近だと、ドラマ「名建築で昼食を」の第2話にも登場してます。
その自由学園を作った羽仁もと子さんが、
「婦人之友社」という出版社も作って、学校運営と雑誌の発行をしてて、
あ、これどっちも元は今から100年も前の話ですが(もちろん今も現存)、
その読者の集まりが「全国友の会」という勉強会的な団体になって、
その友の会が全国12箇所で運営しているのが「幼児生活団」。
で、名古屋の「名古屋友の会幼児生活団」に通ってたわけです。
それにしてもこの幼稚園、知る人ぞ知る、みたいな幼稚園。
知る人ぞ知るっていうか、全ての行事が子供には絶対内緒で進行する、
という仕組みらしく、軽い遠足なら遠足当日に知るというか、
何かのお話の流れから「じゃあ今から行ってみますか?」的なノリ
(もちろん本当のノリではなく、裏で完璧に準備されてますよ)で、
座学から突然の遠足になる、みたいな感じもあったり。
しかも子供が持ち帰ってくる先生からのお手紙で親も初めて知る、みたいな。
なんなら学年が違うお母さんにも行事の詳細は絶対内緒。
全てがサプライズの毎日、みたいな幼稚園。
「来年になったら面白いことあるよ〜」っと上の学年のお母さんに聞かされて、
ワクワクしてその日を待つ、みたいな感じ。
子供が寝た後に奥様がせっせと準備してる時も、
超ひそひそ声で「〇〇〇の準備。これ内緒ね。まだ絶対内緒!」って。
何を作ってるか、いつそれが見れるのか、何の行事なのか、誰が作ったのか、
もうほとんどのことが子供には内緒。
もちろん運動会(ではなくここは体操会)とか、作品展みたいなのとか、
目標に向かって準備や練習や制作をしていくというオープンな行事もありますが、
その辺もあまり外部に漏らさないというか(最初の運動会は写真NGだったような)、
とにかく詳細は内緒、その時その瞬間のお楽しみ、という感じにしてるのかな。
最初は、なんなの?この幼稚園は秘密結社なの?っとずっと思ってました。
2019年についにインスタグラムが開設されたけど、
2020年はいろいろ世の中大変だったのもあってあんまり更新されてません。
よく教育するとは、よく生活させることである
「よく教育するとは、よく生活させることである」ってのが、
創設者の羽仁もと子さんが掲げた幼児生活団のテーマで、
普段の生活の中からいろんなことを学んで、生活を大事にしながら、
子供の自主性に任せて自立した人に育って欲しい、っていうような方針。
子供が元々持ってる生きる力を引き出す、みたいな。
幼稚園では先生も親もとにかく見守るだけで、
問題が起こっても手出しも口出しもしなくて、
子供たちが考えて話し合って、自分たちで問題を解決する、
っていうやり方が徹底されてて。
たとえば運動会で転んだり上手く行かずで泣いちゃった子がいたとしても、
大人は誰も助けに行かないし、進行が止まっちゃっても急かさず、
本人がどうするかアクションを起こすまでひたすら待つ。
気づいた他の子がどうしたらいいか考えて、手助けしたり見守ったり。
とにかく大人はついつい先回りして、手出し口出ししたくなっちゃったり、
次の予定があるんだからさ〜みたいな理由で先へ進めたくなっちゃうけど、
そんなのをぐっと堪えてると(いや、これがむちゃ難しい!)、
子供たちは自分で考えて動くようになるんですね。
3年間でそれがめちゃくちゃ成長した点。
掃除や食べること、みんなと遊ぶこと、芸術や自然と触れ合うこと、
規則正しく行動すること、より良くやること、そういう生活の全てが教育。
生活自体が修行って、これなんだか禅の世界みたいな話だけど、
家での生活も幼稚園での団体生活も全部が繋がってる感じ。
子供も大人もみんなが生活を通じて成長する、っていう、まさに生活団。
生活とアートが中心
この幼稚園、毎日通うところじゃなくて、週に2回か3回なんですよね。
1日は普通の登園日、もう1日は音楽の日、もう1日は3学年合同の日。
生活の基本は家庭にあるわけなので、家で家族でやることがそもそもの基本。
そして家で子供たちが生活のあれこれを勉強したり実践したり、
幼稚園ではみんなが集まってその報告をしたり、次のチャレンジを教えてもらったり、
団体生活を学んだり。
具体的には、朝パッと起きるとか、顔洗いとか、着替えとか、掃除とか、
ごはんを座って食べるとか、こぼさず食べるとか、自分で食器を下げるとか、
寝るときに明日の服を用意するとか、そういう普通の生活のこと。
そういうのを子供が率先してやるようになります。
あと冷水摩擦とか、凧揚げとか、野菜を育てるとか、
ジュウシマツを飼育するとか、伝書鳩を飛ばす!とか、
昭和かよ!っていう行事も多いのですが、いや、ほんとに昭和のままなのです。
いや、厳密には昭和じゃない、大正時代!!
そして生活と同時に大事にしてるのが、アート活動。
絵を描いたり、工作したり、音楽を演奏したり、とにかくあらゆるものを創作。
しかも道具は本物を使う、ってことにこだわってて。
紙や絵の具や筆やペンや粘土なんかは、子供用じゃなくて、
大人のプロ用の本物を最初から使う、ってのがいいんですよね。
子供が本物の道具で本気の絵を描いてくるので、
こちらも本気の(美術館の額をやってる)額縁屋さんに相談して、本気で額装しました。
音楽には特に力を入れていて、ピアノを教えてもらったり、
卒業生でプロになった人たちのコンサートがあったり。
そういえば坂本龍一さんは東京の幼児生活団出身。
卒業式は子供たちがいろんな楽器を合奏したり、
自分で作詞作曲した歌を披露したり、とっても楽しそうでした。
いや、卒業式っていうか、卒業制作発表会、みたいな。
これまでに製作したアートの展示があったり、
母親と共同で完成させる卒業制作もあったり、
とにかくアート関係は見応えがすごい、幼児生活団。
校舎内にも歴代の園児たちが制作したアートがあちこちに飾られていて、
とくに制作発表会みたいな時は、ずらっと並んでちょっとした美術館なみ。
子供たちが作るアート、めちゃくちゃ面白いです。
さらに母たちの成長がすごい
そしてここは子供が成長する幼稚園でありながら、
親(というか婦人之友なので母たち)の成長の場でもあるようで。
なんと、ご飯やおやつはお母さんたちが(専任の先生と一緒に)作る!
作るだけならまだしも、八百屋さんとか魚屋さんへの発注から、
お金の管理とかそういうのも全部母親がやるみたい。
友の会は家事家計・教育を含む、生活全体をみんなで研究してる、
っていう超絶DIY感があふれてるっぽい団体で、お母さんたちがすごい。
子供を送って行って終わりじゃないですからねぇ。
一緒に登校して、子供たちが遊んだり勉強したりしてる間は、
お母さんたちにも当番がいろいろあってみんなで仕事や勉強をする、っていう。
ちなみにお父さんはたまに行事に呼ばれるくらい。
やったのって託児係の助っ人と、運動会のカメラの準備くらいかなー。
で、この3年で、奥様は料理はできるようになるわ、お菓子は作れるようになるわ、
洋服は作れるようになるわ、家計簿はつけられるようになるわ、すんごい成長ぶり。
ちなみに登園用のリュックは子供がデザインしてお母さんが手作り。
その他にも色々(どれも完全に内緒だけど)お母さんたちは手作りしてて、
お父さんは役割がないので、その企画段階をちらっと覗かせてもらうだけなんだけど、
ま〜とにかくすんごい!そんなのイチからやるの!?すっごーっていう感じ。
そして最後の卒業式に着る子供たちの服は全員お母さんが手作り。
しかも我が家は奥様の自分のワンピースと、子供のトレンチコート、
ワタクシのジャケット&パンツ&ネクタイまでついでに作ってくれました。
この時に着てたのが卒業式用に作ったワンピース。
ちなみに、母体の「友の会」はご婦人たちの団体なので、
家事と家計ってのが基本中の基本で、
何度かその研究発表会みたいなのを見に行ったことあるんだけど、
なんちゅうか、インターネットを使わない時代のライフハック、
というか、おばあちゃん達の知恵袋のシンプルライフ編、みたいな。
このブログでよく書いてるミニマリズムやシンプルライフの記事と、
完全に路線が同じで笑いました。
あ、ここ選んで間違ってなかったわ、と。
自由と自立ってやっぱり人生の1番のテーマ
創設者の羽仁もと子さんの有名な言葉で、
(原文はちょっと違うけど)「靴を揃える自由」みたいな話があって、
普通は子供に「靴を脱いだらちゃんとそろえなさい」って教えるじゃないですか、
そこを「あなたには靴を揃える自由があります」って教えるわけです。
これってすごい「自由」だし、子供も1人の人間として完全に尊重してて。
自由ってやっぱり自立とか自主性とかがベースにあって、
そこには責任も伴うわけだけど、やるかやらないかも自分で決める自由がある、
子供でも大人と同じようにやれることがあるし、それを自分で決めることができる、
生活の一員だっていう意識を持ってやることやらないことを自分で決める、
自由なんだから(自分にとっても他人にとっても)より良い選択をすることが大事、
っていうような環境に、こんな小さな子供の頃にいれたってのはすごいな、と。
これ「生活」の部分を家族だけじゃなくて、
学校とか集団とか会社とか地域とか国とかどんどん大きくしていってもいいと言うか、
今の時代でも完全に通用すると言うか、むしろ今こそ、大人こそ、って気もして。
かなりインディペンデントで攻め攻めなアティチュードを感じます。
繰り返しますが、これ100年も前からの教えね。
あ、上の写真は卒業式の日にたまたま玄関で見つけたやつ。
これは大人に向けて書かれてたやつです。
『くつの間違いが多くなっています。
名前をつけてピンチでとめると良いですよ。』
何かを強制することもないし、やるやらないは自由だし、
一つの解決アイデアとしてこんなこともありますよ〜っと示してくれるだけ。
あとは自分で考えてより良い行動をしましょう、っていう。
子供にもそうだし、大人にもそう。
全てがこの調子で、自主性に任せられてるのが生活団。
おすすめの本をいくつか
ちなみに、羽仁もと子著作集ってのが出てまして。
これが面白いんです!が、めちゃくちゃたくさんあるし(全21巻!)、
昔の言い回しでなかなか読みにくいので(失礼!)、
傑作集的なやつがおすすめです。
特に個人的に面白かったなーと思ったのは「最も自然な生活」。
これは子育て関係なく人間の成長のための参考として読んでも面白いです。
羽仁もと子さんはキリスト教がベースにあるんだと思うけど、
個人的には禅とかシンプルライフとかミニマリズムとか、
そういう方面に興味がある人にビビッとくる何かがある1冊なのではないかな、と。
子育て中のお母さんには超名作中の名作「おさなごを発見せよ」。
これは必ず読みたい育児書ベスト10みたいな企画によく登場するので、
羽仁もと子って誰?っていう人でも、なんとなく知ってるかもしれません。
さらに子供が読む用の「子供読本」ってのも出てます。
子供が卒業式の日にプレゼントされた本。
いろはかるた版のが装丁が可愛くてとっつきやすいかもしれません。
どれも超昔の本なので、今の時代に置き換えたりすり合わせたり、
他の考え方や新しい考え方なんかも合わせたりしながら読むと、
生きる上での何かのヒントがあるのではないでしょうか。
普遍的な真理は時代は関係ないということもよく分かります。
っていう幼児生活団を卒業しました、って話。
ほんっと変わった幼稚園だったなー、楽しい3年間でした!
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